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第2話 

「詩織、付き合ってください」

 その時、私は廊下の向こう側に立っていて、手には南広志の母が私に持たせたお弁当箱を提げていた。好きな男の子が他の誰かを選ぶのを、呆然と見つめていた。

 お弁当箱の中の肉を全部取り除くことが、私が怒りを表現する唯一の方法だった。

 しかし、彼は気にもしなかった。彼の目には、ただ柳詩織しか映っていなかった。ただ新鮮で刺激的な恋愛だけが彼の心に入っていた。

 私は泣き崩れ、この感情を諦めることにした。しかし、運命は時に人を弄ぶものだった。

 彼らはすぐに別れた。柳詩織は飽きて、容赦なく南広志を振った。

 彼女は新しく転校してきたいじめのリーダーに目を向け、将来の夫となる男に心を奪われた。

 その男の家は権力と金に恵まれ、のさばっていた。彼女が望む全てを与えてくれる存在だった。

 南広志はこの終わりを受け入れたくなく、何度も彼女のところに行ったが、いじめのリーダーに見つかってしまった。

 そして、彼に対するいじめが始まったのだ。

 父親が早世した彼は、母に育てられた。貧しい時期には私の家に助けを求めていた。

 彼は権力を持ついじめのリーダーに敵うことができなかった。

 今でも、大学試験が終わった日のことを覚えていた。皆が歓喜に沸く中、私は雨の中で彼を探し回った。最後に小道で息も絶え絶えの南広志を見つけた。

 彼の受験票は破られ、地面に投げ捨てられていた。彼は鼻が青黒くなり顔が腫れ上がって、傷だらけだった。

 私に気づいた瞬間、彼は私を強く抱きしめ、全身が震えていた。

 「奴らは俺の人生を壊そうとしている」南広志は歯を食いしばりながら言った。「俺は絶対、俺を見捨てた人に代償を払わせてやる!」

 私は彼を慰めるしかなかった。「大丈夫、全てうまくいくよ」

 彼は突然顔を上げ、私の目をじっと見つめた。

 「凛、俺には君しかいないんだ」

 彼はそう言った。

 しかし、その時私は彼の視線を避けて、優しく言った。「待ってるから。再受験、頑張って」

 私はこの機に、彼の心を勝ち取ろうとは思っていなかったし、誰かの代わりになるつもりもなかった。篠原凛は篠原凛であり、妥協するなんてしなかった。

 私はとても慎重だった。

 彼が再試験して、私の学校に入ってきた。そして、彼が私を追い求めてから、足かけ三年の月日が流れた。

 彼は言った。「やっと、俺が何を逃したのか分かった」

 少年の目はとても真剣だった。私はとうとう勇気を持って一歩踏み出すことに決めた。

 王子はようやく振り返り、背後にいるシンデレラを見つけた。全てが物語の最も完璧な結末のようだった。

 03

 七年後の同窓会。

 南広志は一週間前に、私に高価なドレス、バッグ、靴を買ってくれた。一式そろえたその値段はかなりのものだった。

 私は思わずぷっと吹き出した。「この準備は大げさすぎるわ」

 彼は言った。「みんなに、俺の奥さんになることがどれだけ幸せか知ってもらいたいだけだ」

 しかし、その後、会社に急用ができて、結局行けなくなった。

 南広志は大いに不満だった。私が会議している時、彼は電話をかけ続けた。私が出ないとSMSの嵐が始まった。

 「凛、俺たちはもうすぐ妊活を始めるのよ。その無駄な仕事を辞めてくれないか?」

 「今日は同窓会だ。多くの知り合いが来るのに、君がいないとどう思われる?みんな、俺が女一人養えないと思うだろう!」

 私は深く息を吸い、最速で彼に返事した。「南広志、私はあなたの自慢の道具じゃない」

 たとえ私の月収が彼よりはるかに低くても、これが私の好きな仕事だった。誰にも奪われるものではなかった。

 結婚する女性には、必ず自分の収入源が必要だった。

 南広志の最後のメッセージはこうだった。「仕事と俺たちの結婚生活、どっちが重要だ?」

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